もしも、という仮定はあまり好きではないのだがね。
・・・神子殿、聞いてくれまいか。
　
もしも君に出会わずにいたら、と、私は思わずには
いられないのだよ。
雨の日も晴れの日も、君がこうして側に居てくれるから。
もしも君に会わずに、そして恋にも落ちずにいたなら、
私はどうしていただろうか？と。
ああ、そうだね。
相変わらず刹那の恋に身をやつしていたかもしれないねえ。
　
・・・いや、怒らせるつもりではないのだよ。
え？悔やむなんて。・・・神子殿。
こうして過ごす時間が、どんなにか私の心を満たしているのか
きみは知っているだろうか？
生まれて初めて”失いたくないもの”を得た私にとって、
それを失うことがどんなに恐ろしいことかも？
”もしも君に会わずにいたら”というのは、どうやら
”君を失いたくない”気持ちの表裏のようだね。
　
神子殿、私がこんなことを云うのはおかしいかい？
願わくば時の果てるまで、その柔らかな笑顔を抱きしめて居るのは、
この私でありたいと思うよ。
そう祈ってくれないか？ねえ、愛しい神子殿。